「WindowsでLinuxコンテナを動かすのに、Docker Desktopを別で入れるのが手間」「ライセンスの都合でDocker Desktopが使えない」「WSLと一体でもっと軽くコンテナを回したい」——そんな声に応える機能が、2026年6月30日にパブリックプレビューとして公開されました。
WSL container(略称 WSLc)は、Linuxコンテナを追加ツールなしでWindowsから直接扱える機能です。CLIは wslc.exe。この記事では、実際の導入手順・コマンド・現時点の制限を、公式情報にあたって整理します。
本記事は当初「WSL3とあわせて発表された機能」「WSL3対応PC(Copilot+ PC等)が前提」と記載していましたが、「WSL3」は存在しない誤報でした。Microsoftが公式に否定しています。WSL container はWSL2の上に載る追加機能であり、特定のPCを必要としません。パブリックプレビュー公開に伴い、実際の仕様・コマンドに全面更新しました。経緯はWSL3は存在しない|誤報の正体にまとめています。
・WSL container(WSLc) は、Linuxコンテナを追加ツールなしでWindowsから扱う機能。CLIは wslc.exe
・2026年6月30日パブリックプレビュー公開。GA(正式提供)は2026年秋目標
・入手は wsl --update --pre-release。WSL 2.9.3以上が必要
・Windows 10でも動作する。特定のCPU/NPUは不要
・virtiofs でファイルアクセス約2倍高速、新ネットワークスタック consomme、--gpus でGPUパススルー
・Docker Compose は未対応。Docker Desktop等とは共存の位置づけ
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1. WSL container(wslc)とは
WSL container は、Build 2026で発表され、2026年6月30日にパブリックプレビューとして公開された機能です。Windows上でLinuxコンテナを作成・実行・操作するためのCLI wslc.exe(container.exe というエイリアスもあります)とAPIが提供されます。
位置づけとして重要なのは、これがWSL2を置き換えるものではないという点です。既存のWSL2の仕組みの上に載る追加レイヤーです。
flowchart TB
A["Windows 11 / Windows 10"] --> B["Hyper-V 軽量VM<br>WSL2 の基盤 ※変更なし"]
B --> C["WSL2 Linux カーネル"]
C --> D["Linux ディストリビューション<br>Ubuntu / Debian など"]
C --> E["WSL container<br>wslc.exe ← 今回の新機能"] 2. 動作要件と導入手順
必要なのはWSL 2.9.3以上のプレリリース版だけです。特定のCPUやNPUは不要で、Windows 10でも動作することをLoewen氏が確認しています。
# WSL をプレリリース版に更新する
wsl --update --pre-release
# バージョン確認(2.9.3 以上であること)
wsl --version
# 使えるようになったか確認
wslc --help GitHubから直接ダウンロードしてインストールすることもできます。
3. 基本コマンド
Docker CLIに近い操作感です。公式ブログで示されている実例を挙げます。
コンテナを起動する
# Linux デスクトップ環境(webtop)をバックグラウンドで起動
wslc run -d --name=webtop -e PUID=1000 -e PGID=1000 -e TZ=Etc/UTC \
-p 3000:3000 -p 3001:3001 lscr.io/linuxserver/webtop:ubuntu-kde 起動後、ブラウザで localhost:3000 にアクセスするとLinuxデスクトップが表示されます。
GPUを渡して使う
wslc run --rm --gpus all pytorch/pytorch:2.5.1-cuda12.4-cudnn9-runtime \
python -c "import torch; print(torch.cuda.is_available())" True が返ればコンテナ内からGPUが使えています。GPUの受け渡しはContainer Device Interface経由です。
セッションを終了する
wslc.exe system session terminate 4. 何が速くなったのか
WSL container の実体はCLIの追加だけではありません。WSLの下層プラットフォームに改善が入っています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
virtiofs | 新しいファイルシステム共有方式。ファイルアクセスが約2倍高速 |
consomme | 新しいネットワークスタック |
| メモリ管理 | 使い終わったメモリを段階的にWindowsへ返却 |
| GPU | --gpus フラグでコンテナにGPUを渡せる |
なお virtiofs と consomme は、現時点ではWSL container内でのみ有効です。通常のWSLへ既定で適用するのは今後の予定とされています。
5. Docker Desktopとの関係
「Docker Desktop代替」と語られがちですが、Microsoft自身は共存の立場を明示しています。公式ブログでは、Docker Desktop・Podman Desktop・Rancher Desktopといった既存ツールも、今回の下層プラットフォーム改善の恩恵を受けると説明されています。
機能面の現状は次のとおりです。
| 観点 | Docker Desktop | WSL container(wslc) |
|---|---|---|
| 提供形態 | 別アプリ | WSLに内蔵 |
| 操作 | docker CLI / GUI | wslc.exe / API |
| Docker Compose | 対応 | 未対応(「最も要望の多い機能」として検討中とMicrosoftが回答) |
| GPU | 対応 | 対応(--gpus) |
| 成熟度 | 成熟したエコシステム | パブリックプレビュー(GAは2026年秋目標) |
| 本番利用 | 可 | APIのみサポート予定。CLIは開発用途想定 |
Docker Composeを日常的に使っているチームは、当面Docker Desktopの継続利用が現実的です。単発のコンテナ実行や環境の使い捨てには wslc が軽快です。
6. 現時点の制限と注意点
プレビュー段階のため、次の点を把握しておいてください。
- Docker Compose 未対応。複数コンテナの構成管理はできません
- 本番利用はAPIのみサポート予定。CLIは開発用途が想定されています
-
virtiofs/consommeはWSL container内でのみ有効。通常のWSLへの適用は今後 - USBデバイスのパススルー(
--device、--privileged)については、現時点で明確な提供状況が示されていません - 企業導入向けには、Intuneによるレジストリ許可リスト、Microsoft Defender for Endpoint連携(プライベートプレビュー)が予定されています
まとめ
- WSL container(
wslc.exe) は、Linuxコンテナを追加ツールなしでWindowsから扱える機能です - 2026年6月30日パブリックプレビュー公開、GAは2026年秋目標
- 導入は
wsl --update --pre-releaseのみ。WSL 2.9.3以上が必要で、Windows 10でも動作します -
virtiofsでファイルアクセス約2倍、--gpusでGPUパススルーに対応 - Docker Compose は未対応。Docker Desktopとは共存の位置づけで、既存ツールも下層改善の恩恵を受けます
- 「WSL3の機能」という報道は誤報でした。WSL container はWSL2の上に載る追加機能で、特定のPCを必要としません
よくある質問(FAQ)
Q. WSL container を使うのに特別なPCは必要ですか?
不要です。 「Copilot+ PCやSnapdragon X Elite搭載機が必要」という情報は誤報でした。WSLが動作する大半のWindows環境で使え、Windows 10でも動作します。必要なのはWSL 2.9.3以上のプレリリース版だけです。
Q. Docker Desktopは不要になりますか?
用途によります。Docker Compose が未対応なので、Composeを使っているチームは当面Docker Desktopが必要です。Microsoftも共存の立場を明示しており、Docker Desktop・Podman・Rancherも今回の下層改善の恩恵を受けるとしています。
Q. 本番環境で使えますか?
現時点ではパブリックプレビューです。Microsoftは「WSL container API については本番利用をサポート予定」としていますが、CLIは開発用途が想定されています。本番採用はGA(2026年秋予定)以降が無難です。
Q. Dockerイメージはそのまま使えますか?
はい。公式ブログの例でも lscr.io/linuxserver/webtop や pytorch/pytorch といった一般的なコンテナレジストリのイメージがそのまま使われています。
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出典
- Microsoft Windows Command Line Blog — WSL container is now available for public preview
- Craig Loewen 氏(WSL プロダクトマネージャー)のX投稿(2026年6月23日)
- Microsoft Learn — Comparing WSL Versions(公式・WSL1/2のみ掲載)
- マイナビニュース — Microsoft、「WSL 3」は存在せず Windows向けWSL Containersをプレビュー公開
