「ローカルでLLMを回したいけど、WindowsだとGPU周りが面倒そう」「WSLからGPUって本当に使えるの?」「NPU搭載PCを買えばもっと速くなる?」——ローカルAIをWindowsで始めようとすると、必ずぶつかる疑問です。
結論から言うと、WSL2からGPUを使うことは以前から可能で、いま実際に動かせます。一方で、一時期広く報じられた「WSL3のNPUパススルー」は誤報でした。この記事では、実際に動く構成と手順だけを扱います。
本記事は当初「WSL3のGPU/NPUパススルー」という内容で公開していましたが、その前提が海外メディアの誤報でした。Microsoftが公式に「WSL 3は存在しない」と否定しています。旧版に記載した 「NPUパススルー対応」「DirectML 2.0」「ベアメタル比3〜5%」「対応PCはCopilot+ PC等に限定」はいずれも公式の裏付けがない記述でした。実際に動作する内容へ全面的に書き直しています。誤った情報をお届けしたことをお詫びします。
・「WSL3」は存在しない。GPUが使えるようになったのはWSL2で、しかも新機能ではない(2020年から対応)
・Windows側にNVIDIAドライバを入れれば、WSL2内でnvidia-smiとCUDAがそのまま動く
・Ollama・llama.cpp・PyTorchはWSL2上で普通にGPU推論できる
・2026年6月30日公開の WSL container(wslc) で、コンテナにも --gpus all でGPUを渡せるようになった
・NPUをWSL経由で使う公式の仕組みは、現時点で発表されていない
・特別なPCは不要。NVIDIA GPU搭載機であれば今すぐ始められる
ご用途に合わせた最適な構成をご提案します。
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1. 訂正:WSL3もNPUパススルーも存在しない
まず前提を正します。WSLのプロダクトマネージャーCraig Loewen氏は2026年6月23日、X(旧Twitter)で次のように述べました。
As a PSA, there is no such thing as WSL 3! I've seen some articles talking about it, and it's not currently a thing.
(訳:お知らせとして——WSL 3というものは存在しません。いくつかの記事がそれについて書いているのを見かけましたが、現時点でそんなものはありません)
一時期流通した「WSL3のNPUパススルー」「DirectML 2.0」「ベアメタル比3〜5%」といった記述は、Microsoftの公式発表・公式ドキュメントのいずれにも存在しません。
2. 実際の構成:WSL2からGPUはこう見えている
WSL2はHyper-Vの軽量VM上でLinuxカーネルを動かしていますが、GPUについては専用の仕組みでWindows側のドライバに橋渡しされています。WSL内にLinux用GPUドライバを入れる必要はありません。
flowchart TB
A["PyTorch / Ollama / llama.cpp<br>WSL2 の Linux 内"] --> B["CUDA Toolkit<br>WSL 用"]
B --> C["WSL2 Linux カーネル<br>GPU 橋渡し層"]
C --> D["Windows 側 NVIDIA ドライバ"]
D --> E["物理 GPU"] ここでよくある失敗が、WSL内でLinux版NVIDIAドライバを入れてしまうことです。橋渡しの仕組みが壊れて nvidia-smi が動かなくなります。入れるのはWindows側のドライバだけです。
3. 手順:WSL2でGPUを使えるようにする
必要な作業は3つだけです。
① Windows側にNVIDIAドライバを入れる
通常のGame Ready DriverまたはStudio Driverで構いません。WSL専用の特別なドライバは不要です。
② WSL2でGPUが見えるか確認する
# WSL2 の Linux 内で実行
nvidia-smi GPU名とドライバのバージョンが表示されれば成功です。ここが通れば9割終わっています。
③ CUDA Toolkit(WSL版)を入れる
PyTorchなどをソースから動かす場合に必要です。必ずwsl-ubuntu向けのリポジトリを使う点に注意してください。
wget https://developer.download.nvidia.com/compute/cuda/repos/wsl-ubuntu/x86_64/cuda-keyring_1.1-1_all.deb
sudo dpkg -i cuda-keyring_1.1-1_all.deb
sudo apt-get update
sudo apt-get -y install cuda-toolkit 4. ローカルLLMを動かす
GPUが見えていれば、あとは通常のLinuxと同じです。
Ollama(最も手軽)
curl -fsSL https://ollama.com/install.sh | sh
ollama run llama3 インストール時にGPUが自動検出されます。ollama run 実行中に別のシェルで nvidia-smi を叩き、メモリが使われていればGPU推論が効いています。
PyTorch
pip install torch
python -c "import torch; print(torch.cuda.is_available())" # True なら成功 llama.cpp
git clone https://github.com/ggml-org/llama.cpp
cd llama.cpp
cmake -B build -DGGML_CUDA=ON
cmake --build build --config Release /mnt/c/...(Windows側)に置くと、ファイルI/Oが大幅に遅くなり、モデルのロードに時間がかかります。~/models/ などLinux側に配置するのが鉄則です。 5. 新機能:WSL container でGPUを使う
ここが2026年6月30日に実際に追加された部分です。WSL container(wslc.exe)を使うと、コンテナにGPUを渡してAIワークロードを動かせます。
# WSL をプレリリース版に更新(WSL 2.9.3 以上が必要)
wsl --update --pre-release
# コンテナにGPUを渡してCUDAが使えるか確認
wslc run --rm --gpus all pytorch/pytorch:2.5.1-cuda12.4-cudnn9-runtime \
python -c "import torch; print(torch.cuda.is_available())" GPUの受け渡しはContainer Device Interface経由で行われます。プロジェクトごとにCUDAバージョンを切り替えたい場合など、環境を汚さずにAIワークロードを試せるのが利点です。
ただし現時点ではパブリックプレビュー(GAは2026年秋目標)で、Docker Compose未対応です。Composeを使った複数コンテナ構成が必要な場合は、当面Docker Desktopが現実的です。
6. NPUはどうなのか
率直に言うと、WSL経由でNPUを使う公式の仕組みは、現時点で発表されていません。
旧版記事に書いた「NPUパススルー対応」「DirectML 2.0によるAMD XDNA 2 / Intel Core Ultra / Qualcomm NPUの活用」は、誤報に由来する記述でした。Microsoftの公式資料にNPUに関する記載はありません。
Copilot+ PCなどNPU搭載機をお使いの場合、NPUを活用するアプリはWindows側で動かすのが現状の前提です。「WSL内のLinuxからNPUを叩く」構成は、公式には用意されていないと理解しておくのが安全です。
ローカルAIをWSLで動かすなら、NVIDIA GPUを積んだマシンを選ぶのが現時点で最も確実です。
まとめ
- 「WSL3」も「NPUパススルー」も存在しません。旧版の記述は誤報に基づくものでした
- 一方で WSL2からのGPU利用は以前から可能で、いますぐ動かせます。特別なPCも待機も不要です
- 手順は「Windows側にNVIDIAドライバ → WSL内で
nvidia-smi確認 → CUDA Toolkit(wsl-ubuntu版)」の3ステップ - Ollama・PyTorch・llama.cppはWSL2上で普通にGPU推論できます。モデルはLinux側のファイルシステムに置くのが鉄則
- 2026年6月30日公開の WSL container(wslc) で、コンテナにも
--gpus allでGPUを渡せるようになりました(プレビュー、Compose未対応) - NPUをWSLから使う公式の手段は現時点でありません。ローカルAI目的ならNVIDIA GPU搭載機が確実です
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よくある質問(FAQ)
Q. WSL内にNVIDIAドライバを入れる必要はありますか?
不要です。むしろ入れてはいけません。 Windows側のドライバをWSL2が橋渡しする仕組みのため、WSL内にLinux版ドライバを入れると nvidia-smi が動かなくなります。WSL内に入れるのはCUDA Toolkit(wsl-ubuntu向け)までです。
Q. nvidia-smi が動きません
まずWindows側でGPUドライバが最新か確認してください。次に wsl --update でWSL本体を更新します。それでも駄目な場合、WSL内にLinux版NVIDIAドライバを入れていないか確認してください。
Q. NPU搭載PCを買えばローカルAIが速くなりますか?
WSLで動かす前提なら、現時点では効果を期待できません。 WSL経由でNPUを使う公式の仕組みが存在しないためです。ローカルAI用途ならNVIDIA GPUを優先してください。
Q. WSL container(wslc)は使うべきですか?
コンテナで環境を分離したい場合は有用ですが、パブリックプレビュー段階でDocker Compose未対応です。まずはWSL2に直接Ollamaなどを入れる構成で十分実用になります。
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出典
- Craig Loewen 氏(WSL プロダクトマネージャー)のX投稿(2026年6月23日)
- Microsoft Windows Command Line Blog — WSL container is now available for public preview
- Microsoft Learn — Comparing WSL Versions(公式・WSL1/2のみ掲載)
- NVIDIA — CUDA on WSL User Guide
