【日本版】 2023年世界デジタル競争力ランキング 日本は総合32位、過去最低 - IMD business school for management and leadership courses
IMDの世界競争力センター(World Competitiveness Center,所長:アルトゥーロ・ブリス IMD教授)は11月30日、「IMD世界デジタル競争力ランキング」の2023年版を発表しました。本ランキングは、デジタル技術をビジネス、政府、社会における変革の重要な推進力として活用する能力と態勢を、国・地域ごとに測定、比較するものです。 1位に米国が返り咲き、2位オランダ、3位シンガポールになりました。前年1位のデンマークは4位に。10位以内には、東アジアの3カ国・地域(香港、台湾、韓国)や北欧3カ国(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)が入りました。 日本は前年調査から3つランクを下げた32位となり、2017年の調査開始以来過去最低となりました。技術的枠組みや科学的集積における優位性を、ビジネスの俊敏性、規制の枠組み、人材が阻害する構造が変わらないまま低落が続いています。ただ、ビジネスの俊敏性、IT統合などに下げ止まり傾向がみられるなど、今後に期待できる部分も垣間見えます。 IMD世界デジタル競争力ランキング・総合順位 日本の結果 対昨年比:総合順位で前年の29位から32位に下がり、過去最低を更新しました。 因子レベルでは、「知識」が昨年と同じ28位でしたが、「技術」(昨年30位)、「将来の準備」(同28位)がともに32位に下落したことが響きました。 過去5年の傾向: 総合順位では、2019年の23位から今年の32位(9ランク低下)と、低落傾向が続い ています。因子レベルで見ると、この5年で「知識」が3ランク、「技術」が8ランク、「将来の準備」 が8ランク下がっています。 サブ因子の傾向:サブ因子レベルで日本の過去5年の順位を見ると、大きく3つのグループに分けられます=下グラフ参照。上位グループの「技術的枠組み」(7位)や「科学的集積」(15位)、「IT統合」(16位)における優位性を、下位グループの「規制の枠組み」(50位)、「人材」(49位)、「ビジネスの俊敏性」(56位)が引き下げている構造が維持されたまま低落する傾向が続いています。 上位グループのサブ因子3つの詳細 サブ因子を構成する指標と併せて見ると、最も上位の「技術的枠組み」(2019年2位→2023年7位) は「無線ブロードバンド普及率」(2位)を始め、各指標は10位台もしくは20位台を維持しています。「通信技術の充足度 * 」(26位)の大幅な上昇が目立ちます。 次いで「科学的集積」(11位→15位)では「研究開発への公的支出(対GDP比)」「全特許に占めるハイテク関連特許の割合」「教育・研究開発用ロボットの数」が軒並み6位だった一方で、「女性の研究員」が57位と、課題もあります。 一時20位台に落ちていた「IT統合」(18位→16位)は「サイバーセキュリティ*」の順位の上昇などもあり、この2年で16位まで上昇、5年前より上位につけました。 下位グループのサブ因子3つの詳細 「人材」(46位→49位) では、「教育評価(PISA – 数学/15歳対象)」(5位)、「都市経営*」(9位)などに成果が見られます。一方で「上級管理職の国際経験*」(64位)、「デジタル/技術的スキル*」(63位)、「高度外国人材への魅力*」(54位)の3つが軒並み低いことが響いています。 「規制の枠組み」では、 「企業での外国人雇用と移民法制*」(62位)の低さが目立ちます。また、「技術の開発応用に対する法的支援*」(49位)も前年から8ランク下落しました。 「ビジネスの俊敏性」(62位→56位) では、「機会と脅威に対する企業の対応*」(62位)、「企業の俊敏性*」(64位)、「ビッグデータとアナリティクスの活用*」(64位)が軒並み低く、日本の経営幹部の強い危機感が感じられます。一方、 「産学間の知識移転*」(43位)が前年より6ランク上昇するなど、ペシミズムを超えた挑戦が始まっている可能性を示唆しています。 *:エグゼクティブ調査による指標 指標からみる日本の「強み」と「弱み」 上位10カ国に入った指標 因子 サブ因子 指標 順位 知識 人材 教育評価(PISA – 数学/15歳対象) 5 訓練・教育 高等教育での教員一人当たりの学生数 3 訓練・教育 高等教育修了率(25-34歳人口比) 6