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可用性とは何か?システム品質を支える“Availability”の意味と対策

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現代のITシステムやWebサービスにおいて、「いつでも使える」という状態は、単なる理想ではなく現実的な要求事項となっています。SNS、ECサイト、クラウドサービス、業務アプリケーションなど、私たちが日常的に利用する多くのシステムが、常時安定して稼働していることを前提としています。

しかし、どんなに高機能なシステムでも、ユーザーが必要なときに使えなければ意味がありません。そこで注目されるのが「可用性(Availability)」という概念です。

本記事では、可用性の定義からその指標、向上方法までをわかりやすく解説します。


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可用性とは何か?

可用性(Availability)とは、システムやサービスが「必要なときに、必要な人が、問題なく利用できる状態」にあることを指します。言い換えると、「止まらない」「落ちない」「使えなくならない」ことが保証された状態とも言えるでしょう。

システムがいくら高性能でも、頻繁にダウンしていては業務に支障をきたし、ユーザーからの信頼を失ってしまいます。可用性は、そうしたトラブルを未然に防ぐための「システムの安定性と信頼性」の一側面であり、システム品質の非常に重要な指標です。


可用性の測定方法:稼働率とは?

可用性は数値として表すことが可能で、その代表的な指標が「稼働率」です。稼働率は以下のような計算式で求められます。

稼働率 = 稼働時間 ÷(稼働時間 + 停止時間)

例えば、ある1年間においてシステムが1時間だけ停止し、残りはすべて正常に稼働していたとすると、稼働率は次のようになります。

稼働率 = (365日 × 24時間 - 1時間) ÷ (365日 × 24時間)99.988%

一般的に「99.9%」「99.99%」「99.999%」といった形で表現され、「ナインの数」が多いほど可用性が高いシステムとされます。たとえば「99.999%(ファイブナイン)」は、1年間でのダウンタイムがわずか5分程度であることを意味します。


可用性と信頼性の違い

似たような言葉に「信頼性(Reliability)」がありますが、これは「ある一定期間、故障せずに連続して稼働し続けられるかどうか」を表す概念です。可用性とは密接に関係していますが、完全に同じ意味ではありません。

たとえば、「頻繁に止まるけれどすぐに復旧するシステム」は、信頼性は低いけれど可用性は高いとも言えます。逆に、「めったに止まらないが、一度止まると復旧に時間がかかるシステム」は、信頼性は高いけれど可用性が低い場合もあります。

つまり、可用性 = 信頼性 + 保守性 と言える側面があり、「止まらない」だけでなく「止まってもすぐ復旧する」ことも可用性の一部なのです。


可用性と情報セキュリティ

可用性は、情報セキュリティの3大要素である「CIA(機密性・完全性・可用性)」の一つにも数えられています。

  • 機密性(Confidentiality):情報が許可された人にだけ開示されること
  • 完全性(Integrity):情報が改ざんされず正確に保たれること
  • 可用性(Availability):必要なときにアクセスできること

つまり、どれほど情報が安全に守られていたとしても、システムにアクセスできなければ、セキュリティとしては不完全です。セキュリティと可用性は相反することも多く、バランスの取れた設計が求められます。


高可用性(HA)とは?

「高可用性(High Availability)」とは、システムがほぼ常に稼働可能である状態、またはそれを目指す設計思想のことです。

一般的には、以下のような対策や構成を取ることで高可用性を実現します。

冗長構成

サーバー、ネットワーク、電源、ストレージなどを二重化(冗長化)することで、1つの障害で全体が停止しないようにする構成です。

クラスタリング

複数のサーバー(ノード)を1つのシステムとして連携させ、どれか1台に障害が起きても他が代替して動作を継続します。

フェイルオーバー

システムが異常を検知したとき、自動的にバックアップシステムに切り替えてサービスを継続する仕組みです。

ロードバランシング

アクセスの負荷を複数のサーバーに分散し、個々の障害や負荷集中を防ぎます。

監視とアラート

常時システムの状態を監視し、異常発生時には即時対応できる体制を整えます。


可用性向上のための実践的な対策

高可用性を実現するには、単なるハードウェアの冗長化だけでなく、ソフトウェア面や運用体制も含めた包括的な取り組みが必要です。以下のような観点で設計・運用を進めることが重要です。

  • 異常発生時の迅速なリカバリ計画(MTTRの短縮)
  • 想定外の障害を含むBCP(事業継続計画)の策定
  • クラウドインフラ(AWS、Azureなど)の可用性設計
  • SLA(サービス品質保証契約)に基づいた目標値の設定と監視

可用性の高さがビジネスに与える影響

現代のビジネスにおいて、システムの停止は「サービス停止=損失」に直結します。特に次のような業種では、可用性の高さが競争優位性にもなります。

  • ECサイト:アクセス不能が売上に直結
  • 金融・保険:取引や情報提供の停止は信用問題
  • 医療・介護:診療や治療に支障をきたすリスク
  • インフラ企業:電気・ガス・交通システムなど公共性が高い

可用性を無視した設計は、最終的にユーザー離れや損害賠償、企業イメージの毀損といった深刻な事態を招く可能性があります。


まとめ

  • 可用性とは、システムが必要なときに常に使える状態にあることを意味します。
  • 稼働率として数値化され、「ナインの数」で表現されます。
  • 可用性は信頼性・保守性・耐障害性と密接に関係しており、システム設計全体での最適化が必要です。
  • 高可用性を実現するには、ハード・ソフト・運用のあらゆる面で冗長化・自動化・監視を徹底することが不可欠です。
  • ビジネスの信頼性や継続性を守るためにも、可用性の確保は避けて通れないテーマです。

高可用性を目指すことは、単に「止まらないシステム」を作るだけでなく、「止まってもすぐ復旧できる」「止まってもユーザーを失望させない」仕組みを持つということでもあります。可用性の高い設計・運用体制を構築することが、今後ますます重要になるでしょう。

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